職人の生き様
会社の業務内容変更で機械の売却が決まった。
動かしているのは50代の職人一人。
彼は数年前、査定/評価の完全デジタル化があった際、今さらパソコンは出来ないと退職願いを出してきた。会社全体のルール変更なので特例は認められず(本人は特例を望んではいなかったが)、雇用形態を正社員から契約社員に切り替え、働いてもらっていた。
機械の売却を告げた、あの時は、返事をするだけで、何も言葉は言わなかったが、表情で察することが出来た。寂しい顔だった。
私の入社前から何十年もこれで食ってきたのだ。
売却が迫ると同時に、職がなくなる。
次の雇用契約を結べないと告げる時が近づいていた。
今日言おうと決めていた日の朝、本人から退職届けが出された。
正直、周りから本人に漏れたと思えるタイミングだった。
契約期間がまだ残っており、機械の引き渡しまで一ヶ月を切るその時、彼は自分の意思で会社を辞める決断をしていた。
機械が失くなるのであれば、会社の役に立たないので、辞める と。
カッコ良すぎだ。少し涙が出た。